白井健三選手が6月16日(水)に現役引退を発表しました。
白井健三選手は2013年から2018年まで世界選手権、オリンピックの日本代表として、世界の大舞台で長く大活躍してきた選手です。まだ社会人3年目の24歳なので3年後のパリオリンピックまで十分目指せる年齢だけに、早すぎる引退に驚きました。
白井健三選手の主な戦績
世界選手権とオリンピック
2013年世界体操選手権アントワープ大会 種目別ゆか金メダル 種目別跳馬4位
2014年世界体操選手権南寧大会 団体銀メダル、種目別ゆか銀メダル 種目別跳馬4位
2015年世界体操選手権グラスゴー大会 団体金メダル、種目別ゆか金メダル 種目別跳馬7位
2016年リオ五輪 団体金メダル、種目別跳馬銅メダル 種目別ゆか4位
2017年世界体操選手権モントリオール大会 個人総合銅メダル、種目別ゆか金メダル、種目別跳馬金メダル
2018年世界体操選手権ドーハ大会 団体銅メダル、個人総合7位、種目別ゆか銀メダル、種目別跳馬銅メダル
国内主要大会
2011年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか2位
2012年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか5位
2013年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝
2014年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝
2015年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝 跳馬5位
全日本団体選手権 日体大優勝
2016年全日本体操個人総合選手権2位 NHK杯5位
全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝 跳馬5位
全日本団体選手権 日体大2位
2017年全日本体操個人総合選手権3位 NHK杯2位
全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝 跳馬7位
全日本団体選手権 日体大3位
2018年全日本体操個人総合選手権2位 NHK杯2位
全日本体操種目別選手権 種目別ゆか優勝 跳馬3位
全日本団体選手権 日体大2位
2019年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか3位
2020年全日本体操選手権 種目別ゆか4位
2021年全日本体操種目別選手権 種目別ゆか2位
白井健三選手が衝撃のデビューを飾ったのが2011年、当時まだ中学3年生の選手が全日本種目別選手権に出場し、ゆかで世界チャンピオン内村航平選手に次ぐ2位に入り、注目を集めました。 小さい体で高難度のひねり技を次々に成功させる堂々とした演技に、凄い選手が現れたと衝撃をうけました。
そして、2013年の全日本種目別選手権、高校2年生となった白井健三選手が世界選手権の代表になるためには、派遣標準得点15.900を出さなければならないというほぼ不可能な高すぎるハードルが設定されたなか、白井健三選手は後方3回半ひねり(E)~前方2回ひねり(D)、前方1回ひねり(C)~前方3回ひねり(F)、後方2回半ひねり(D)~前方2回半ひねり(E)、テンポ宙返り~後方3回ひねり(D)、最後に後方4回ひねり(F)という、どのシリーズ一つとっても誰もやったことのない超高難度の高速ひねり技という、当時、信じられないほど難しいDスコア7.4の構成を成功させ、15.900の高得点を出して優勝!
体操の歴史を変えるかのような凄い演技を高校2年生が成し遂げたという快挙に会場が凄い盛り上がったのを鮮明に記憶に残っています。
その年の世界選手権では、まさに異次元の演技でゆか優勝!
跳馬でもユルチェンコ3回ひねりを成功させ4位。
ゆかで実施した後方宙返り4回ひねりがF難度の新技シライ/グエン、前方宙返り3回ひねりがシライ2、跳馬のユルチェンコ3回ひねりがシライ/キムヒフン、なんと1つの大会で3つの新技が認定される快挙となりました。
世界大会でも物怖じしないで堂々と演技できる強心臓も白井健三選手の凄いところです。
待ちにまったゆかと跳馬のスーパースペシャリスト白井健三選手の登場は、団体優勝を目指す日本チームにとっても最後のピースとなりました。
2014年世界体操選手権南寧大会では、中国の地元の大会で完全アウェーな採点の中、0.1差と肉薄の2位。
2015年世界体操選手権グラスゴー大会では大学1年となった白井健三選手は無敵のゆかにG難度の大技リ・ジョンソンを新たに追加したDスコア7.6の構成で16.325の超高得点をたたきだす活躍で念願の団体優勝!
2016年リオ五輪では、内村航平選手、加藤凌平選手、田中佑典選手、白井健三選手、山室光史選手と最高のメンバーが揃い、予選4位から決勝は見事に巻き返し団体優勝!
白井健三選手もこの大舞台、得意のゆかで16.133の高得点をたたき出して団体優勝の原動力の活躍!
日本中が歓喜にわきました!
白井健三選手は種目別決勝、得意のゆかでは着地を乱すミスもあり4位に終わりましたが、跳馬では自身が編み出したユルチェンコ3回ひねりにさらに半ひねり加えた前人未到のユルチェンコ3回半ひねりを成功!銅メダルを獲得しました。
これが跳馬でのシライ2に認定。
2017年、2015年の豊田国際で白井健三選手が世界で初めて成功させた最高H難度の超大技シライ3をゆかの演技に組み込み、リオ五輪後のルール改正以降では驚異的なDスコア7.2を達成。この最強のゆかをベースに、他の種目も強化し、全日本個人総合で3位、NHK杯で2位と個人総合でも日本代表入りするほど強くなりました。
この年に行われた世界体操選手権モントリオール大会では、予選で負傷欠場となったエース内村航平選手から後を託される形に、それに応える活躍で、個人総合銅メダル、種目別ゆか金メダル、跳馬金メダルと大活躍しました。予選のゆかでは今も破られていない現ルールでの最高得点15.766をだしています。
2018年、大学最終学年となった白井健三選手、谷川翔選手といったさらに下の新世代が台頭するなかでも全日本体操個人総合選手権2位 NHK杯2位と日本代表入り。
大学最後のインカレでは、萱和磨選手、谷川航選手、千葉健太選手、谷川翔選手といった日本代表選手が揃う最強の順天堂大学を抑えて団体優勝!
白井健三選手の涙、キャプテンとして、部を引っ張ってきたからこその溢れ出る思い。見ているこちらも感極まってきたのを覚えています!
この年の世界体操選手権ドーハ大会は、中国に加えてロシアが台頭、日本チームは団体銅メダルとなりました。
白井健三選手もこれまでより減点が厳しくなった新ルールと粗悪なタイシャン製の器具に苦しめられ、個人総合7位、得意のゆかでもシライ3を回避したDスコア6.8の構成で14.866の得点で銀メダル、跳馬で銅メダルとなりました。
2019年、白井健三選手は左足首の怪我をしてしまい、全日本個人総合選手権では30位、NHK杯でも23位と振るわず、全日本種目別選手権ゆか決勝では、ドーハ世界体操選手権と同じ6.8の構成まで戻してきましたが14.900の得点で3位。全日本選手権種目別ゆかの7連覇を逃しました。
コロナ禍に見舞われた2020年、2021年と減点に厳しいルールに対応するために徐々に立て直して、得意のゆかでは、15点台にのせるいい演技を見せてきました。
最後の演技となった6月の全日本種目別選手権では、リ・ジョンソン(G)と伸身新月面(F)2つの大技とシライ2、後方2回半ひねり(D)~前方2回半ひねり(E)、最後に後方3回半ひねり(E)と白井健三選手ならではの得意の超高速ひねりを盛り込んだ演技を決め、15.133の高得点で2位。
Dスコアは全選手中最高の6.9で演技しました!
会場に手を振って応えた白井健三選手、清々しい晴れ晴れとした表情が印象的でした!
白井健三選手は「地元のオリンピックを1つの区切りにしたいという思いがあった。代表選考会で最後に自分の演技ができて満足した。すっきりした状態で現役を終わることができている。選手としての未練は1つもない状況だ」と心境を語り、「恵まれた体操人生だったと思う。体操は点数を競う競技だが、人を認めあうことを体操からは教わった。試合で優勝することや代表に選ばれるときも嬉しいが、先輩や後輩たちと笑いあった1日1日が宝物だったなと思う」と競技生活を振り返りました。
今後は大学で指導者として活動していくということで「自分の経験したことを伝えていきたい」と抱負を語ったとのことです。
白井健三選手、ゆかで3つ、跳馬で3つも新技を生み出した、体操史に残る名選手だと思います。
ゆかと跳馬のスペシャリストから個人総合で世界選手権銅メダルをとるまでに成長、内村航平選手とともに日本チームをひっぱる活躍は素晴らしかったです。
得意のゆかでの異次元の演技と高得点には、いつも大興奮させてもらいました。
大舞台に強く、団体戦でチームの期待を一身に背負う時にこそ最大の力を発揮するのが、白井健三選手の真骨頂でした。
初めての世界選手権で見せた世界を驚かせた勢いのある演技、リオの団体戦で見せた日本チームを救うゆかの演技、2016年全日本団体選手権最終種目ゆかで見せた16.750をたたきだした演技!モントリオール世界選手権予選で見せたゆか現ルール世界最高得点の15.766を出した演技。たくさんの伝説的な演技、鮮烈に覚えています!
また白井健三選手と同学年には、萱和磨選手、谷川航選手、千葉健太選手、前野風哉選手と強い選手が揃っていて、いわゆるシライ世代と注目されました。
2014年の全日本ジュニア選手権で、白井健三選手と萱和磨選手が同点優勝!
千葉健太選手が3位、谷川航選手が4位となりました。
それぞれが大学に入り成長し、2017年の全日本個人総合選手権予選では、1位千葉健太選手、2位谷川航選手、3位白井健三選手、4位タイに萱和磨選手とシライ世代が上位を独占。日本代表で活躍する白井健三選手と同世代のライバル達がお互いに刺激をうけあい、切磋琢磨しながら強くなっていき、日本代表の強さを支えています。
今回早すぎる引退に、まだまだ白井健三選手の素晴らしい演技、これからも見ていたかったというのが、本当の気持ちですが、決断が早い所も白井健三選手らしいなと思います。
日体大の土井陵輔選手のゆかに白井健三選手の影響を強く感じますので、これからは指導者として、強い選手をたくさん育ててほしいと思います!
白井健三選手、競技生活お疲れ様でした。
たくさんの感動をありがとうございました!