パリ五輪がいよいよ7月26日から開幕と迫ってきました。
体操競技は男子予選が7月27日から始まり、8月5日まで熱い戦いが繰り広げられますね。
今回はそのパリ五輪代表選考となった4月の全日本体操個人総合選手権と5月のNHK杯を振り返ってみたいと思います。
2013年度以降、全日本体操種目別選手権が6月に行われ、そこも代表選考に含まれていましたが、今年から同大会が11月に移設されたので、12年ぶりにNHK杯で代表が全て決まり、発表される運びになりました。
それに合わせてかNHK杯も2014年度以降、男女共に1日ずつの競技だったのが、2日ずつ行われるようになりました。2日間競技が行われるのは2013年度以来、11年ぶりとなります。
今年の代表選考、まず昨年の世界体操選手権で個人総合優勝した橋本大輝選手が内定。
全日本予選、全日本決勝、NHK杯1日目、NHK杯2日目の4日間の個人総合合計得点で、橋本大輝選手選手を除く上位2名が選出。
これにより、1位の岡慎之助選手、2位の萱和磨選手が代表に決定しました。
そして、橋本大輝選手、岡慎之助選手、萱和磨選手と合わせて、団体決勝のチーム得点が最も高くなる組み合わせとなる選手が5位以内から1名、それ以外から1名が選出されます。
5位以内からの選出はあん馬、鉄棒で高得点を出した杉野正尭選手。
そしてつり輪と跳馬で高得点を出した谷川航選手が選出となりました。
パリ五輪代表メンバーは
橋本大輝選手、
岡慎之助選手、
萱和磨選手、
杉野正尭選手、
谷川航選手
の5名が決定されました。
以下の表は代表選考4日間の得点と順位になります。
全日本体操競技選手権大会で1位だった橋本大輝選手は、NHK杯の本会場練習で右手中指の側副靭帯損傷の怪我をしてしまい(突き指と捉えていいとのこと)パリ五輪まで期間が短いこともあり、大事をとってNHK杯は棄権となりました。
1位は岡慎之助選手。
全日本予選2位、全日本決勝3位、NHK杯1日目1位、NHK杯2日目10位とNHK杯2日目であん馬のミスもあり得点を落としたものの、86点台が2回、85点後半が1回とハイレベルな得点を並べて堂々のNHK杯初優勝!
一昨年の全日本決勝、跳馬で足を痛めて、平行棒の着地で足を負傷してしまい右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまう事態となりましたが、見事に復活してきました。しかも弱点だったつり輪が格段に強化されて1段と強くなっています。
想像を絶するような努力があったと思います。岡慎之助選手の心の強さを感じますね。
2019年の世界ジュニア体操競技選手権で弱冠15歳で個人総合優勝し体操ニッポンの宝と言われた逸材がついにパリ五輪へ、その美しい捌きはまさに一級品!世界が驚くことでしょう。
2位は萱和磨選手。
全日本予選3位、全日本決勝4位、NHK杯1日目7位、NHK杯2日目7位。
全日本予選の85.864、全日本決勝の85.732と高得点を出して、ゆかや跳馬で細かいミスが出たNHK杯でも大きなミスにはせずに持ち直す強さありました。
萱和磨選手のこの大きなミスを出さない安定感は、パリ五輪の大舞台の究極の場面で本当に大事になってきます。東京五輪の団体チームの主将に続き、パリ五輪でも体操男子チームの主将に任命されました。気迫あふれる萱和磨選手、頑張ってほしい!
次の表は全日本予選、全日本決勝、NHK杯1日目、NHK杯2日目の4日間で各選手のベストスコアでの得点と順位になります。
代表選考4日間のベストスコアで1番高い得点だったのは、橋本大輝選手が全日本予選でマークした88.199です。
6種目合計Dスコアは驚異の36.9!
去年のMAXDスコア36.5からゆかで0.2、平行棒で0.2アップさせてきました。
これはもう断トツの世界最高Dスコアです!
東京五輪以降どころか、リオ五輪以降のルール改正後まで遡っても世界最高となるDスコアです。
その最高難度の演技構成をハイクオリティで雄大に実施していて特別感が凄い!
全日本決勝でも4種目目までは、ゆか、あん馬、跳馬の3種目を15点にのせる超高得点を並べてきてたので、本当に90点台も夢ではないような異次元の強さがありますね。
橋本大輝選手は2019年、高校3年生にして世界選手権に初出場し、コロナ禍の2021年に開催された東京五輪では、日本代表のエースとして団体銀メダルに貢献、個人総合と種目別鉄棒では金メダルを獲得、2022年、2023年と世界選手権の個人総合を連覇!
絶対王者内村航平選手から日本のエースを引き継ぎ、新たな王者になった、まさに体操界最強の選手です。
パリ五輪でも王者の演技で世界中を魅了して、五輪個人総合2連覇を達成してほしいです!
代表選考4日間のベストスコアで2番目に高い得点だったのは、土井陵輔選手がNHK杯2日目にマークした86.431。
4日間のトータルでは3位だった土井陵輔選手、NHK杯2日目の得点86.431はその日の最高得点なのはもちろんのこと、4日間を通しても橋本大輝選手に次ぐ2位の高得点でした。NHK杯1日目を終えた時点からの7位から3位まで大きく順位を上げました。
6種目合計Dスコアは35.2。全日本予選の34.3からゆかで0.5、跳馬でシライキムヒフンを実施して0.4上げるなど合計0.9も上げて攻めてきました。
実施の美しさに定評のある土井陵輔選手、高難度を誇るゆか、平行棒のヒーリーの捌きの美しさや、鉄棒の迫力ある演技は一級品の凄さ!
ハイクオリティで技のキレが抜群で、見ていて気持ちのいい演技です。
その上ここまでDスコアを上げてきたので、このハイスコアも納得ですね。
全日本決勝とNHK杯1日目の鉄棒で大過失を出しているので、安定感が課題でしょうか。
2019年の全日本ジュニアで橋本大輝選手と北園丈琉選手に次いで3位だった土井陵輔選手、その時から美しくて正確な演技は光ってました。
日体大で白井健三さん、内村航平さんから指導を受け、ゆかの演技と着地が強化され、演技に力強さが加わりました。
今年から社会人となり、同級生の橋本大輝選手と同じセントラルスポーツに入社、同じ所属でライバルの世界王者と切磋琢磨して練習することで演技により迫力が出てきたと感じます。素晴らしいものを持っている選手!頑張ってほしい!
代表選考4日間のベストスコアで3番目に高い得点だったのは、岡慎之助選手が全日本予選にマークした86.166。
合計Dスコアは35.1。つり輪が14.433と高得点なのがいいですね。
これでも平行棒のティッペルトがバータッチの器具上落下で-1.0されて14.000と大過失がありました。平行棒は本来得意種目でNHK杯1日目には15.133を出しています。1点以上上積みできる余地があるのでポテンシャルは計り知れないですね。
正確で美しい演技は抜群なので、パリ五輪では個人総合で橋本大輝選手とワンツーフィニッシュを決めて大ブレイクしてほしいです!
代表選考4日間のベストスコアで4番目に高い得点だったのは、杉野正尭選手が全日本決勝にマークした86.133。
4日間の総合得点5位で、あん馬と鉄棒の貢献点で念願の代表入りを果たした杉野正尭選手。
実は全日本シニアを2022年、2023年と連覇していて、個人総合も強いです。
6種目合計Dスコアは35.8。この代表選考で橋本大輝選手に次いで高い6種目合計Dスコアを誇ります。
なんといってもあん馬で15.000!鉄棒で15.100!とてつもない高得点が素晴らしい!
そして跳馬では安定感のあるロペスを跳んでしまう。
東京五輪の代表選考を始め、毎回あと一歩のところで代表に届かず、悔しい思いをしてきた杉野正尭選手、ついに満を持してパリ五輪の日本代表の座を掴みました。
ダイナミックで魅力的なあん馬と鉄棒で世界を驚かせてほしいです!
代表選考4日間のベストスコアで5番目に高い得点だったのは、角皆友晴選手がNHK杯1日目にマークした85.865。
角皆友晴選手まだ高校3年生にして、このハイスコアは驚異的です。
6種目合計Dスコアは34.1。Eスコアの51.765は今回の代表選考で田中佑典選手に次ぐ高さです。
平行棒のティッペルト、キャッチの時点で腰の位置が高い独特の捌き方、良きです。アテネ五輪代表の中野大輔選手を思い出します。
勢いと迷いのない演技が高校生の時の橋本大輝選手のようですね。ポテンシャル高いです。
現時点で既にあん馬、平行棒、鉄棒が強いので、これから先が楽しみな選手です!
代表選考4日間のベストスコアで6番目に高い得点だったのは、萱和磨選手が全日本予選でマークした85.864。
6種目合計Dスコアは35.5。この代表選考で橋本大輝選手、杉野正尭選手に次ぐ3番目に高いDスコアです。
ゆかで後方3回半ひねり(E)を入れてきて、弾かれるシーンもありましたが、あん馬、つり輪、平行棒、鉄棒と気迫があふれていて安定感抜群という盤石の演技を作り上げてきてました。跳馬のロペスも年々成功率が上がってきてますね。やはり強いです。
パリ五輪では、団体戦のプレッシャーのかかるトップバッターを数多く任されることになると思いますが、失敗しない男の最強の安定感で最高の演技やってくれますね!
頑張ってほしい!
代表選考4日間のベストスコアで7番目に高い得点だったのは、三輪哲平選手がNHK杯1日目にマークした85.530。
6種目合計Dスコアは34.5。去年は代表選考3位で世界選手権代表に選出されましたが、本番直前の怪我で補欠の杉本海誉斗選手と交代、その無念さはいかばかりだったか察してあまりあります。
今回の代表選考では全日本終了時で8位でしたが、NHK杯1日目とNHK杯2日目で85点台を出し、総合で6位まで追い上げました。
ゆか、跳馬、平行棒、鉄棒は素晴らしいものがありますね。
2017年の国際ジュニアで高校2年生にして個人総合優勝し、2018年のスーパーファイナルでは高校3年生にして白井健三選手に次いで2位になった選手。
2022年の全日本団体選手権では跳馬の超高難度技ヨネクラを成功、会場を沸かしました。
ジュニアの頃から注目している選手です。
頑張ってほしい!
代表選考4日間のベストスコアで8番目に高い得点だったのは、松見一希選手が全日本決勝にマークした85.499。
6種目合計Dスコアは34.4。
NHK杯決勝では一班で演技して、総合でも7位に入りました。
ゆかで高難度のひねり技が入っていて、14.433と強かったです。
平行棒、鉄棒もハイレベルで、2022年NHK杯6位、2023年NHK杯10位と上位に入っていて、年々力をつけていますね。
代表選考4日間のベストスコアで9番目に高い得点だったのは、田中佑典選手がNHK杯1日目にマークした85.364。
6種目合計Dスコアは32.8。Eスコア52.564は全選手中最高点でした。
総合でも4位に入りました。
NHK杯1日目終わった時点で3位まで順位を上げ、得意の平行棒、鉄棒でも15点前後の高得点を連発していたので、本当に代表に入るのではないかと思うほど、見せ場を作り、強かったです。特に平行棒は技のひとつひとつが研ぎ澄まされていて、その美しい演技に会場中が魅了されていました。
リオ五輪団体金メダルメンバーにして、34歳のベテラン、その美しい演技はまさに芸術の域にまで高められていました。まさにレジェンドですね。
代表選考4日間のベストスコアで10番目に高い得点だったのは、川上翔平選手が全日本決勝でマークした85.165。
6種目合計Dスコアは35.0。
今季から跳馬で世界的にも実施する選手が非常に少ないヤンウェイ(屈伸メリサリディス)Dスコア5.6を実施していました。着地で前に大きな一歩ありましたが、技自体は安定した実施になっています。大技への挑戦は拍手ですね。
2019年の全日本団体選手権、川上翔平選手がまだ高校生の時にイヤホンガイド場内解説の沖口誠さんが、鉄棒の大逆手になるひねり技の捌き方が素晴らしいと絶賛していたのを聞いて注目していました。
その時から川上翔平選手の鉄棒には特に注目していますが、2022年の全日本体操種目選手権では鉄棒優勝していますし、やはり素晴らしいものがありますね。
2021年の全日本ジュニア王者、平行棒、あん馬も勢いがあり、年々力をつけてますね。まだ大学3年生と若い選手。頑張ってほしい!
この代表選考4日間で、85点以上の得点を出した選手がなんと11名。
世界王者からレジェンド、ベテラン、中堅、若手、期待の新星と魅力的な選手が盛りだくさんで、体操ニッポンの層の厚さは世界最高です。その選手たちによって争われた代表選考は、まさに世界一熾烈なものとなりました。実力者でもミスで決勝に進めない波乱もあり、体操競技の厳しさを感じました。
選手たちの素晴らしい奇跡的な演技を見ていると、体操競技に向き合う真摯な姿勢と積み重ねてきた日頃の鍛錬の凄まじさを感じます。本当に尊いものを見せてもらっているなと感動します。
今回のパリ五輪の代表
東京五輪王者にして世界2連覇王者!橋本大輝選手、
体操ニッポンの宝!岡慎之助選手、
失敗しない男!萱和磨選手、
不屈の男、ついに世界へ!杉野正尭選手、
魔法の着地王子!谷川航選手
まさに最強のドリームチームです!
悲願の団体金メダルと個人総合金メダルを果たしてくれると思います!
種目別でも鉄棒を含む複数の金メダル取れますね。
オリンピックの大舞台で最高の演技を魅せてくれ!頑張れニッポン\(^o^)/